まほやく

止むまで、止むまで(フィガオズ)※現パロ

 今夜はあいにくの雨。今は小雨だが夜中からだんだんと激しくなってくるらしい。そんな天気でもフィガロの機嫌は良好。傘を差し、鼻歌を歌いながら帰り道を歩いていた。明日は久々に休日。今夜は多少はしゃいでもいい夜だ。 何をしようか。ゆっくり一人酒を…

放り投げたカレンデュラ(オエミス)

 いつのことだったか、南の国の兄弟とミスラが土いじりをしているのを見かけたことがある。もちろん声はかけなかったが、少しばかり彼らの様子を見ていた。めんどくさそうにするミスラをなだめる兄弟。球根を食べようとするミスラを止める兄弟。 オーエンか…

ワスレナグサの欲望(オエミス)

 どうか傷つけたことを覚えていて。 ふたりが訪れたときには、空色の花があたり一面埋めつくすように咲いていたのだが、今やすっかり焼け野原となってしまっていた。双子に怒られても僕は知らないからね、というオーエンの言葉に、仕方ないじゃないですか、…

スノードロップ(オエミス)

 甘い匂いがする。とはいえ菓子のような甘さではない。どろどろとせず、澄んだその匂いはどこかで嗅いだことがあるような気がした。どこだったっけ。いつだったっけ。ああ、そうだ。やがて思い出すのは白い花を指差す彼女の姿。その花は春を訪れを告げる花な…

どうぞいい夢を(オエミス)

 いい初夢を見れますように、おやすみなさい。 そんな言葉と共に、賢者から渡されたホットミルクを飲みながら、オーエンは自室で物思いにふけっていた。今日のホットミルクも甘い。何を入れたのやら。 年が明けたところで何も変わりはない。千年以上の時間…

ホットミルクが欲しかった(オエミス)

 多くの魔法使いは眠った頃だろうか。ひっそりと、いつもよりも静かな夜の魔法舎をオーエンはひとり歩く。特に用事があるわけではない。単にまだ寝る気にはならないだけだ。このまま誰にも会わないのならそれでいい。ひとりでいる方が気が楽だ。そういうとい…

もしも忘れてなかったら(オエミス)※現パロ

 街を歩くオーエンの耳に届くのはクリスマスソング。今年もこの季節がやって来たかとようやく気付く。雪がなかなか降らないこの街にいると、冬が来たという実感がいまいちわかない。風は冷たく日は差さず、寒さが増していくものの、なんとなく秋の延長という…

そして今夜も眠れない(オエミス)

 良い夢は終われば虚しい。悪い夢は終わっても苦しい。だから夢見はいつだって悪い。夢を見た時点で起きた後は嫌な気持ちが残るのだから。胸につかえたものを吐き出すようにため息をついてみるが、気分はよくなりそうにない。あきらめてオーエンは身体を起こ…

××とは呼べない(オエミス)※現パロ

「……寒い」 季節は秋から冬へ。年の瀬が近づいていくほどに寒さも増していく。晴れ間はあったものの、吹きつける風はかなり冷えていた。油断して薄着にしたことを悔やむ。手に吐息を吹きかけてすり合わせつつ、オーエンは帰り道を急いでいた。夏であればこ…

甘いのひとつ作れない(オエミス)

 お誕生日おめでとうと言われても、虚ろな胸の中には染み込みも響きもしない。何のためにその言葉が存在するのだろう。オーエンはプリンをスプーンでつつきながら物思いにふけっていた。 食堂にいると誰もかれもが声をかけてくる。それがあまりに面倒で、オ…

扉(オエミス)

 今日も今日とて北の国の魔法使いは任務であった。依頼者のもとに到着し、通された部屋で少々歓待を受けた後、賢者と双子は席を立った。「じゃあ、依頼の詳しい内容を聞いてきますね」「よいか、くれぐれも飽きたとか言って出ていくでないぞ」「なんて言って…

そしてやっぱり眠れない(オエミス)

「今日の俺は頑張ったと思うんですよ」「うん」「殺したくなるのを我慢できましたし」「そうだね」「ちゃんと最後はブラッドリーに譲りましたし」「う、ん……?」「だというのに賢者様は今夜西の国に泊りだそうです」「はあ……」「今夜こそ眠らせてくれるは…