スタレ

色のない世界にホットココア(アベ穹※現パロ)

 晩秋の朝、どこかでは初雪を観測された頃。(今日は薄ぼんやりとした天気だ) そんなことを思いながら、アベンチュリンは駅前通りを歩いていた。日がのぼって数時間経つも、雲に遮られて日差しは地上に届かず肌寒い。街路樹の葉はすっかり枯れ落ち、鋭く吹…

からから(アベ穹)

 彼に会えば胸は温かくなる。けれど空いた穴は埋められない。 どうして? 愛しいひとに会えばこの胸は満たされるはずなのに、からからと、かわいた音が鳴り続けている。 シャワーを浴びたアベンチュリンが部屋に戻ると、穹はベッドに腰かけ、足をぶらぶら…

期待に痺れ(アベ穹)

 好きだ、という言葉に返ってきたのは微笑みだった。「僕も穹くんのことが好きだよ」 両思いだね、と言ってアベンチュリンは穹をぎゅうと抱きしめる。穹も抱きしめ返し、ふたりで笑い合い、見つめ合う。絡んだ視線の熱は上がっていき、互いの顔が近づいてい…

いとしきものよ(アベ穹)

 いとしきものよ。 おまえをなにでつつもうか。 ゆらゆらと、時折ふわりと、キャンドルに灯された小さな火が揺れている。 キャンドルからはシトラスの香り。部屋の中は爽やかな香りに包まれていた。そんな中、物憂げな表情でアベンチュリンはキャンドルの…

フライデーナイト(アベ穹※現パロ)

 金曜日の夜は自宅で彼と酒を飲む。 他愛のない話をして、時に愛を語らう。 最近のふたりの恒例行事だ。 けれど今夜はそうじゃない。『会食が入ってしまってね。遅くなるかもしれないから、早く寝ていて』 穹はいい子でうなずいた。 彼は嘘をつかないか…

彼は恋に胸を焦がすか?(アベ穹)

 黄金の刻とはよく言ったものだ。きらびやかな光に満ちた夢境には、今もなお多くの人々が思い思いの時間を過ごしている。流れてくる陽気な音楽や笑い声を聞き流しながら、アベンチュリンは通話をしていた。相手は十の石心のひとり、ジェイドである。『それで…

色づく秋の庭(アベ穹※現パロ)

 くらうちちぐらさんは、「朝の庭」で登場人物が「寝る」、「コーラ」という単語を使ったお話を考えて下さい。 #rendai #shindanmaker https://shindanmaker.com/28927 真夏に比べて暑さも日差しもず…

離さないよ(アベ穹※現パロ)

「お、わったぁ〜」 深夜一時。課題の提出を終えた穹は大きく伸びをしてからベッドに飛び込んだ。が、直後に腹が鳴った。そういえば昼から何も食べていない。課題の提出どころか、そもそも取り組んですらいないことに気づいたのが昼過ぎ。早朝までに提出すれ…

抱えきれないほどの愛をあげる(アベ穹)

 抱えきれないほどの愛をあげる。「よいしょぉー、はい、アベンチュリン油断したー」「穹くん! 君! 初心者に! 優しくしようという! 気は! ないんだね!?」 ガチャガチャカチャカチャとボタンを連打する音が響く。ホテルの一室のソファに腰かけて…

好きなひとがいます(アベ穹)

 瞳は雄弁という言葉がある。いやはやまったくその通り。穹の琥珀の瞳の中に、恋心が紛れ込んでいるのは一目瞭然。視線を向けている相手に好意を抱いていることは誰もが気づくだろう。視線を向けられている当人なら、なおさらのこと。「なんか……嬉しそうだ…

離さないで(アベ穹)

 この身が背負うは呪いにも似た幸運だ。 ソファに腰かけるアベンチュリンは物思いにふけっていた。 そんな幸運を背負った自分は誰かに奈落の底へと引き摺り込まれそうになっても、落ちることなく平然としているのだろう。けれど自分の手を引いた相手はあっ…

いい子になれない(アベ穹)

 欲に際限はないという。 ある夜のこと。恋人同士のふたりが共に過ごし、身体を重ねて、共に果てた後のこと。穹はぐったりとベッドに横たわっていた。そんな彼を労わるように、アベンチュリンは何度も口づけを落としていた。 好きだなあと、改めて穹は思い…